このお話しの続きです。
「ゴザルぅー!ゴザルぅー!」
『ゴザルぅー!ゴザルぅー!』
父さんのポジションはまさに360°サラウンド。
いやぁ、今日はアリーナ席が取れて本当に良かった・・・なんて思う訳が無いっての。
「意気投合」は大好きな言葉だが今日からはあまり好きじゃなくなるかもしれない。
まさに新しいトラウマ誕生の瞬間である。
カルティエのライターをカシャカシャと弄りながら若い衆は百式を語りだす。
ここでSPW氏ならゴールドラ○タンの立場も少しは考えてみてやって欲しい、そう申し入れただろう。
だが氏がこの場に居ない以上は前向きに生きていくしかない。
『ハイパーメガランチャーはですね、メガバズーカ・・・ナンタラカンタラウンタラ。』
開発秘話とか話されても全く分からない。寧ろ分かったら怖いとも思うけども。
ちなみにこの若い衆は馬鹿ではない。彼は日頃から人の顔色を読むのが恐ろしく上手いんです。
つまり、接待の席で空気の読めない話しをしても今日は父さんが機嫌が悪くならないのを知っている。
そうなんです、今日の父さんはとても機嫌が良いんです。
実は今日嬉しい数荷物が届きました。届いた、というか戻ってきたというか。
ミリ関係?今回は違います。
古ぼけたブルーのライター。
ずっと大昔に、当時それは大変お世話になった方から頂いた物です。
派手なので普段は使う事はありませんが、お祝い事なんかがあると今でも使っています。
でも、この手のライターって大事にしているつもりでも壊れてしまうんですよね。
今回はガス漏れで入院、数ヶ月ぶりに手元に戻ってきました。
たかがライターで機嫌が良いの?
そう思われるかも知れませんが、これを頂いた方にはそれ程にお世話になったんですね。
今でもこのライターを見る度にご恩を思い出します。
そんな大切な思い出がちゃんと使えるようになって戻ってきて、尚且つ今鞄の中に入っている。
それだけで上機嫌な単純な父さんです。
と、そこで思い付く。
金のカルティエが百式ならこのブルーのダンヒルを見てどう思うのだろう。
ガンダムネタではしゃぐ二人にこのライターを見せてみよう、そう思った。
ほれお二人、これを見てどう思うね?
『ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーグ!』
「ゴーグはもっと評価されるべき!(・∀・)」
予想通りの反応に安心すると同時に、分かって貰って嬉しい自分を否定するべきか暫く迷った。
結論としては、ゴーグ誰?と真っ向否定してみた。
この時の二人の落胆振りは言葉では言い表せない。
二人は自分達の好きな事を喋り捲っているだけように見えて、実は父さんとの接点を探してくれているのだろう。
・・・すまん、父さんは冷たい人間なんだ。
若い衆がまたカルティエを弄りながら百式を語りだす。
今度のお題は何故に百式は金色なのか?についてらしい。
金つったら普通はキンキンかギターだろボケが。
父さんの頭の中である曲が流れ出す。
「オタクオタクと呼ぶなかれ オタクほんとはオタクじゃない!」
「オタクは全て金に塗れイェー♪」
米米が15年位前に歌っていた「GOLD GUITAR!!」という曲です。
ここをご覧の方でこの曲をご存知の方は恐らくいらっしゃらないでしょうけども。
しかしこの曲、まさに今の状況を予言しているかのようだ。
いっその事二人とも塗っちゃうか。・・・面倒くさいので止めた。
ふと疑問が。
この二人の理屈だと金や赤の物は全て「専用機」になるんだろうか。
ならば郵○省の車は全て専用機、量産型よりスピードが出るとでも?
・・・そうか、ポストも全てあの方の専用だったのか。知らなかった。
赤・・・ポスト・・・赤ちゃんポスト・・・。
父さんは「赤ちゃんポスト」って言葉が大嫌いだ。
赤ちゃんの命を救う為に必要な物だってのは分かってる。
でもダメ、上手く言えませんが響きが生理的にダメ。
「アナタはさっき言ってた買い物以外には趣味が無いにょ?」
美人さんが自分を気を使っていってくれるのは嬉しいけども「にょ?」は無いだろ、と。
けれでも可愛い子は何を言っても可愛い、そう再認識せざるを得ない千葉の夜。
『無理無理、この方は仕事一筋だもん。まるでエースだぜっ!』
「え、エースかっ!(・∀・)」
ユキポンやスエゾーさんに洗脳工作される以前の父さんだったら、二人が発している言葉を聞き取る事さえ出来なかったと思う。
人間は絶えず進化するものだな、と実感せざるを得ない千葉の夜。
「ところで独身かにょ?」
勿論ですよ今すぐにでも独身です!それと先程は言いそびれましたが実は僕の趣味は貴女です。と心の中では絶叫してみたがあくまでも心の中。
いえ、しかし全く持って全然家庭は上手くいっておりませんので付け入る隙はふんだんに御座いますのでご縁があればどうぞ宜しく。とか言ってみる。
男ってやつは心にも無い事を言ってしまう時がある、と思わざるを得ない千葉の夜。
本心じゃ無いってば。
本当に思って無いってば。
場の空気読んでるだけですってば。
『百式の金色はナンタラコーティングである。』
という若い衆の話を経て話の流れは再び?三度?ミノフスキー粒子へ。
正直父さんはもうお腹いっぱい胸いっぱい。
これ以上ミノフスキー粒子を詰め込むと、鱈腹飲んだ水割りと一緒に拡散メガ粒子砲になって逆流しそうなので二人はいい加減にしておいた方が身の為じゃないかな。
そろそろ「ミノフスキー粒子お断り」そんな立て看板を書こうと思った頃に先様の部長さんが合流。
「ども、遅くなって申し訳無かったですね。」
ええ、全くです。
機嫌が良いのに素直にそう答えてしまったのは父さんは余程お腹いっぱいだったのだろう。
しかし面白いお店ですね?
「あ、お気付きになりました?ここの子ちょっと変わってるんです。」
変わっているのは接待で、しかもこの手の店で今この瞬間にアニソンを熱唱しているアナタの部下でしょう、と喉元まで出掛かったが長年の付き合いに免じて飲み込む事にしよう。
しかし悔しいので一言振って見る事に。
あれ?部長もこの手の趣味をお持ちで?
「い、いやぁ、私は・・・」
父さんも伊達に長い事営業職をやっている訳じゃないんですね。
彼の目は確実に嘘を付いている、父さんの心の中の小人会議は全会一致でそう結論付けた。
そこで軽くトラップを仕込んでみようと思う。
余談だが「心の中の小人会議」は100人くらいで運営されているが先日のゲームでイッちゃんに5人程ヒットされてしまったので現在欠員補充で若干名募集中です。
最近は連休の時なんかは何をなさってるんですか?お子さんも大きくなったでしょう?
「あー、大体女房子供連れて旅行とかですねぇ。苦労しますよ、ハハハ。」
お子さん連れだとお車です?大変ですねー。
「いえいえ、子供が電車が好きなもので。それに電車の方が写真が沢山撮れて喜びますし。」
「で、最終日に撮った写真を編集したりするのが僕の楽しみです。」
なるほど。
はい、もうお分かりですね。
最近は「連休」の時なんかは何をなさってるんですか?
これです。
「休み」の日は何をしているんですか?
これでは人間の本質、特にサラリーマンの場合は本心は聞き出せない。
所帯持ちのサラリーマンにとってはとても貴重な連休の後半や最終日。
つまり自分の為に使える休日。
そんな日の過ごし方を知る事でその方の人となりが分かります。
というか、この人はカミングアウトしたいとしか思えない。
「子供が電車が好きなもので。それに電車の方が写真が沢山撮れて喜びますし。」
この部長さんのお子さんは男の子がお一人。
所帯持ちの趣味人は子供に託ける事が多いですよね。
お子さんが男の子ならなおの事。自分と息子を重ね合わせたり。
よくありますよね?子供が行きたがってるから、とか言い訳して一緒にサバゲ行ったりしませんか?
そしてもう一つ。
電車、そして写真。
一見なんお変哲も無いキーワード、だがここで考えてみて欲しい。
彼は「それに電車の方が写真が沢山撮れて喜びますし。」と言った。
旅の写真のメインは一般的には目的地で撮った写真だと思う。
普通であれば車だろうが電車だろうが写真を撮る枚数はそうそう変わるものでは無いだろう。
せいぜい電車の窓越しの写真が数枚と電車内でお弁当食べている写真が数枚増えるくらいか。
電車で移動すると写真が沢山撮れるなんて趣味は一つしかない。
そう、彼はほぼ確実に鉄道マニア。
しかもそれを父さんに伝えたがっている。
そして理解して欲しいと思っている。
彼は凄くいい人なんだと思います。
父さんが常日頃から標榜して憚らない事。
「相手の人となり、お互いの家族の事まで理解して初めてよい仕事が出来る。」
それを理解してくれて、ずっと気にしていたのでしょう。
その時、件のお嬢さんがカラオケのお立ち台に立ちイントロが流れ出す。
何だっけ?昔聞いたようなこのメロディー。
「今 あなたの声が聞こえる ここにおいでと♪」
ここでミン○イアタックかーーーーーー!(←音が出ます
天は二物を与えるんですね。
聞く人の心を繋いでしまうような彼女の歌声・・・。
ここで彼が堰を切ったように話し出す。
「ずっと言えなかった事があるんです。僕の結婚式まで出て頂いたのに・・・。」
そういえば彼とはもう十年以上の付き合いになる。
はい、もう分かりました。気になさらないで。
「え・・・?」
鉄ちゃんなんですね?でもご自宅にお邪魔した時も気付きませんでした。
「はい・・・全て押し入れに隠していました。」
今夜はそれを伝えたかったのですね?
「はい・・・家族ぐるみでお付き合い頂いているのにと・・・。」
なんて真面目な人だろう・・・父さん心が痛かったんだ。
言い出し辛かったのは僕にも責任があります。申し訳無かったです。
「そんな・・・。」
父さんね、今なら言える気がしたんだ。
何を?・・・勿論自分の事を。
実はトラウマがありまして。はっきり言って仲間内に言いふらしたこいつのせいだ。
色々と事件があった時期に重なったのでかなり酷い目に合った。死ねばいいのに。
でも今なら言える?言えるのか?だがこの人は理解してくれるだろうか?
実は僕も・・・
意を決して言い掛けたその時、おかしなものが視界の隅に映る。
彼女の歌声をBGMにしてヤバめのママに無理やりチークを踊らされる若い衆の姿なのでした。
二人で顔を見合わせて笑った。
そして手を取り合って踊った・・・訳ないだろ。
結局言えなかったなぁ・・・。
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